死は生に内包されるということ

 

Dusk

鹿は死んでいた

正確には、その亡骸すらもほとんどその場にはのこっていなかった。

夕暮れの草むらにその命の痕跡は静かにひろがっていて、

一つの生が終わってからそれ程時間は経っていないであろうにも関わらず

恐ろしさや嫌悪感を感じさせるものはなく

ただその場の冷たい空気と、紅く青く染まる景色の中で

時は流れつづけていた

 

命だったものはその存在を手放して

また別のいのちの一部になったのかもしれないし

その先はわからない

 

ひとつだけ確かだったことは、

そこに明らかな生と死の線引きは見えず

全てが静寂と刻々と変化する自然の一部として

なんの優劣もなくそこに在ったということ

 

 

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

CAPTCHA